2015年06月02日

罪を背負った旅の果て、について。

別役実フェスティバル。
青年座の「山猫からの手紙-イーハトーボ伝説-」を見てきました。
すごくよかったよ。


yamaneco_01.jpg


別役実らしい、いつものアイテム。
電信柱、こうもり傘、リアカー。
旅。
宮澤賢治をモチーフにちりばめられた、別役世界の中で、
それらは何を意味しているのか。


宮澤賢治って、いつまでたっても少年っぽいっていうか、
んー、硬質で理想的でキレイじゃない。
や、別に嫌いじゃないけどさ。
私にだって、そういう少年っぽい気分、理解できるけどさ(笑)
でも、どうしてそれをそんなに望んだのか、今までピンと来なかった。
なんでそんなに「本当の幸せって何?」とか、
「みんな幸せになれ〜(涙)」とか思っちゃうの?
授業では、彼の背景にあるのは、浄土宗だ、キリスト教だとか学んだけどさ。
いや、それ以前にそこへ熱心にはまっちゃう、猛烈に救いを願っちゃう、
何か心理的なきっかけがあったわけでしょ?
それは何?
アメユジュトテチテケンジャ?
妹の死って、まぁ、ショックはショックだろうけど、
妹は彼の一番の理解者だったとかいうけど、
そこまでのもの?
なにこの人、神経過敏?
少年期・青年期の純情を保ち続けたってこと?
だとしたら、「宮澤賢治、好き〜」とか言うの、恥ずかしくない?(笑)

そんなふうに思っていたけど。

それがピタッとわかった。
同じ強さ、同じ勢い、同じベクトルで、
ぐだぐだで汚くて救いようのない、血まみれの何かを彼は内包していたんだね。
そこからどうにかして逃げたかったんだね。
近親相姦、生まれてはいけない血の濃い子供、婆殺し、盗み、その果ての一村全滅。
死ぬまで絶対に他人に漏らしてはいけない恥辱、罪、秘密
それを彼は抱えていたんだね。
彼は彼から逃げたかったんだね。

そうして、逃げ切れなくなった時、
その罪を償うために、血祭りに上げられるんだね。
花火が鳴るごとに、罪人は砲につめられ、
花火とともに打ち上げられ、
血肉となって撒き散らされる男女をイメージした。
そのくらいの凄惨な内実。
そのくらい、自分をめちゃめちゃにしなくちゃ許されないような罪。
それを、彼は抱えていたのではなかろうか。
だからこそ「みんな幸せになるにはどうしたらいいのか」という願いの言葉は、
「こんな自分でも幸せになるにはどうしたらいいのか」という
すさまじく切迫した願いに置き換えられる。

2幕が秀逸でした。
鮒のタロウが「本当の幸せがあってね、みんな幸せになるよ」と言う時、
胸に迫って涙が出た。
人としての禁忌を破った自分でも、幸せになれるのか、
なっていいのか、どうしたらなれるのか、
身を斬る自問に聞こえて。

彼の中に在る血まみれの罪が、目の前に突き付けられて
抜き差しならなくなればなるほど、
彼の求める理想の世界が美しく澄明に輝いてみえる。

2幕中の、飢饉は、ものがあっても飢饉。
別役さんのこの言葉に、ドキっとした。
ものがあっても飢饉
ひとの心が餓鬼道に落ちてる状態。
もっと、もっと。
それは現代の話じゃないのか。
3幕の罪人を裁く村人たちとは、私たちのことじゃないのか。
ぞっとする。

いつも誰かと比べている、比べられてる。
だから、こいつは叩いてもいいという失敗した人を見つけると、徹底的にやっつけちゃう。
血祭りに上げちゃう。
あいつは自分より下!自分はあいつより上!っていうのを確認するために。
それはやってもやっても終わらない。
ナゼならインターネットでつながったために、
ワールドワイドで比較の序列に並んでいるから。
ああ、これは昔の戯曲なんかじゃない、
いま観るべき芝居なんだと思えた。


最後に自分の番がくる、
絞首台に向かうような気分だ。
でも、そこには誰もいない。
ただ雪が降る道をとぼとぼ歩く。
ああ、歩いているうちに、自分の中に潜っていたのか。
いままでの旅は夢だったのか、と思う。

それが夢なら、夢から覚めよう。
夢でよかったと思おう。
そして、北の国に向かおう、現実の世界に。
いいこともある、イヤなこともある、
許されない罪を背負って、みんな許し合っている、現実の世界に。

そんな印象を受けました。
感涙。




ええと、あとはね。
暗転中の猫の目がステキ(笑)
猫好きには、それだけで、もうOK!(笑)

chibineco_0602.jpg

↑山猫ならぬ、ちび猫。
どんだけ猫好きやねん(笑)

3幕の照明もステキでした。
ずっと鳴り続けてる風の音も。
それでかな、ちょっとフィリップ・ジャンティを思い出したな。



別役実は不条理劇といわれるけど、
物語がしっかりしていて、2時間ひきこまれたよ。
久しぶりに「終わってほしくないなぁ」「もう1回観たいなぁ」と思える舞台に出会いました。
・・・両隣のおばちゃんたちは寝てたけど(笑)




青年座の「山猫からの手紙-イーハトーボ伝説-」は、6/7(日)まで。
代々木八幡の青年座劇場で。
演出は伊藤大さん。




posted by ゆきお at 23:08| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。