2013年06月14日

夢の続き

フィリップ・ジャンティの「動かぬ旅人」を見てきました。

FG_01.jpg


「人生の意味を探る、4つの不思議な夢の風景をめぐる旅」

@
幕開け、舞台一面を覆う青い布、海の音。
段ボールの船の底から次々と現れる人々。
に包まれた顔。
吹きつける紙。
抜ける腕。
小人。

やがて嵐が船を揺さぶる。
うねる波。
船から落ちる人。

箱の中の赤ん坊たち。
「パパ?」の


A
海の深い青布が一気に舞台奥へ消えると、そこは荒野。
ラジコンカーが行く。
月探査のよう。
ラジコンカーが消えると、火山が噴火するように表れる人々。
歌とともに子供が生まれる、というか、子供が量産される。
工業的な仕掛け。
落下傘が降って来る。
生命さえも工業化された世界の狂気とグロテスク。

再び布で覆い尽くされる舞台。
赤い照明。
まるで火山のマグマ、または内臓の動き。
そうか、マグマは地球の内臓なのか?
生命の生々しい、ある意味、気持ちの悪い手触り。


B
一変。
ピンクの照明、ホリゾンには緑。
なんとも幻想的な色。
掲げられる花輪。
男と女。
裸身。
祝祭の空気。
人が生まれ、成長し、恋をして、また子供が生まれる。
布が人々を飲み込んで、大きくうねる。


C
一気に舞台奥に消えると、風の音。
夜明けの明かり。
詠唱。
一団となって走るマイム。
かと思えば、一列になって倒れる人々。
抱えられ、チェロのように弾かれ、歌う女。
ひとり、またひとりと倒れては、紙にくるまれる。
葬儀のよう。
あれ?こんなにダンサーがいたっけか?
と思ったら、紙にくるまれてた人がスルリと紙から抜け出して、ダンサーの中に戻ってた。
驚き!
紙の中はもぬけの殻。
踏みつぶしていくダンサーたち。

不思議な紙。
立ちあがる紙。
顔に押し付けると、そのままの形に残る紙。
紙で遊ぶ。
紙を踏んだまま、列になって踊る。

いつの間にか、人形が人々の真ん中に現れる。
グロテスクな姿。
ビッチ!とののしられ、顔や体をむしりとられると、中からサラリーマンの姿が現れる。
走る。
走るのに疲れた頃、もうひとりの自分(裸の)に出会う。
サラリーマンはもうひとりの自分の背にまたがり、もうひとりの自分を走らせる。
倒れる自分を捨てるサラリーマン。
やがて、サラリーマンの腕がなくなり(幕開きのシーンを思い出す)、新しく生やす。
足もなくなり、新しく生やす。
最後には顔だけになった、不気味な姿になる。
まるでバイオハザードのアンデッドのような。
何かと戦っているのか?
苦しい。

舞台袖から風が吹いて来て、すべては飛ばされていく。

暗闇に響く、子供の声。
「パパ?」




「登場人物たちは、さまざまな困難に満ちた4つの不思議な夢の風景の中を旅して、
 人生の意味を探る。
 コミカルであると同時に恐怖に満ちたこの舞台で、
 フィリップは人間の持つ心の奥底の暗い面に目を向けている。
 幻想と妄想、狂気と歓喜。
 視覚的な衝撃とともに、観る者の心の奥の深いところをえぐってくる。
 楽しいだけ、おもしろいだけの舞台ではなく、
 観た人の心に大きな波紋を呼び起こす作品なのだ。
 フィリップが舞台上に具現化する人間の無意識。
 「観客に向けて無意識の扉を開きたい」というフィリップからのメッセージを、
 あなたはどう受け止めるだろうか。」


マグマのような真っ赤な布のうごめきを見た時、
ああ、内臓のようだと思った。
そして、次に男と女が出会うシーンを見て、
内臓は子宮だったのか、とも思った。
彼らは生まれる前に人生を体験しているのだろうか。
そして、荒野での葬儀。
人という生き物の一生はこんなふうに終わる。
不気味な人形。
もし別の宇宙からやってきた人が観たら、現代に生きている人間って、
こんなふうにグロテスクに見えるのかもしれないな、とか。

照明や布を使った視覚的な効果、手品みたいな仕掛け、あやつり人形。
印象的・絵画的な舞台は、あれ、これって何々みたいだな…と思った瞬間から、
自分の中でいろいろな意味を見出して、
勝手につなげて、ひとつの物語を作ってしまう。

無意識へのアクセス、
というより、観ている人の数だけ物語が生まれる舞台作品、
そんな感じ。


動かない旅人は、旅をしていると言えるんだろうか?
どこを旅しているんだろうか?
無意識の中、夢の中を旅しているんだとしたら、
旅の続きは夢の続きなんだろうか?


posted by ゆきお at 02:42| Comment(2) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あまりに幻想的かつ抽象的で、本当にこれは侑生さんの目の前で現実に繰り広げられた光景なのかと思うほど。
でも動画を見ると正におっしゃるような非現実的な幻想風景が繰り広げられていたのですね。

それを生で御覧になったのは何という官能的な時間だったことでしょう。うらやましい。
Posted by maro at 2013年06月17日 02:14
実に絵画的、幻想的な舞台でした(笑)

最初のうちは「何が起こっているんだろう?」「どう捉えればいいんだろう??」と、
宙ぶらりんな感じでしたが、
「マグマみたい〜内臓みたい〜」と思った瞬間から、作品の中に入れた感じ。

思うに、舞台の上で起こっている何かに触発されて、
自分の中の記憶やイメージが次から次へと引き出されて、
自分で勝手にそれをつなぎ合わせて、物語が作られていく、という作品なんじゃないかな。
だから、見ている人の数だけ物語が生まれる。

経験や記憶が少ないお子ちゃまには、引き出されるイメージもないので、
つまらない作品かもしれません(笑)
大人な舞台作品。
さすが、おフランス!(笑)
Posted by ゆきおん at 2013年06月22日 22:56
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